神さまはオフライン? ― 「神の声が消えた日」をめぐる旅

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こんにちは。γ波催眠療法の施術と指導をしているShiva(しば)です。

今日からジェインズの「二分心」と「二分心の崩壊」について見ていきましょう。

その過程には私が専門としている催眠の世界だけでなく、
もっと多面的に見ていけると良いなと思っています。

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かつて、人類は「神の声」を直接聞いていた。

そんな大胆な仮説を提唱した心理学者がいます。

アメリカの心理学者、ジュリアン・ジェインズ(Julian Jaynes)です。

彼は、古代の人類には現代のような「内省的な意識」が、まだ備わっていなかったのではないか、と考えました。

これは決して、古代人の知能が低かったと言いたいのではありません。

むしろ、彼らは現代人とは異なる「心のOS」で動いていたと指摘したのです。

その着想の源となったのは、後述する古代ギリシャの叙事詩『イリアス』などの登場人物たちの描かれ方でした。

物語の中で、彼らは悩み、葛藤し、自ら決断を下すことはほとんどありません。

何か大きな行動を起こすとき、彼らの耳元にはいつも「神の声」が響いていました。

そこで提唱されたのが、<心はかつて二つの領域に分かれていた>とする「二分心」という仮説です。

この仮説によれば、心の一方が「命令を下す神」として振る舞い、もう一方が「それに従う人間」として行動していたといいます。

当時の人々にとって、脳内から聞こえるその命令は、自分自身の思考ではなく、文字通り「神の声」として体験されていたというのです。

ジェインズが注目したのは、古代ギリシャの叙事詩『イリアス』です。
そこでは英雄たちは深く思い悩みません。
迷うより先に、神が語ります。
アキレウスもヘクトルも、決断の場面で神々の介入を受けます。

ジェインズは、これを単なる文学的な比喩だとは思いませんでした。
当時の人々にとって、その声は空想ではなく、今の私たちが自分の考えを頭の中で反芻するのと同じくらい、リアルで切実な「現実」だったのではないか――。そう考えたのです。

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やがて文明が進みます。
社会の仕組みは、少しずつ複雑になっていきました。

集団は大きくなり、
見知らぬ民族と出会い、交易が始まります。
そのたびに、人はその場で判断を迫られました。

いつも通りの「神の命令」だけでは、変わり続ける現実に追いつけなくなったのです。

こうして、脳内に響いていた「神の声」は、ゆっくりと静まっていきました。
人は、自分の内側で考え、迷い、選ぶ存在へと移っていきます。

そして、ジェインズが挙げた理由はこれだけではありません。

文字の発明も大きな転機であったと、ジェインズは述べています。

「神の言葉」はパピルスや石板に刻まれるものへと変わります。
書き留められた「神の言葉」は、<直ちに従うもの>から<分析の対象>になり、圧倒的だった「声の力」は少しずつ弱まっていきました。

文字を読み書きすることは、主に左脳の言語機能を使います。

文字を利用することで、右脳的な命令の声に頼らない回路が発達していったのです。

さらに、自分の考えを外に記録できるようになったことで、他者には見えない「自分だけの空間」が生まれました。
内面という場所、主観的に思索する場、これこそ「内省的な意識」でした。

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ジェインズは、この劇的な変化を「二分心の崩壊」と呼びました。

「意識」が誕生した瞬間です。

でも、頭の中に響いていた神の声がオフラインになったことは、自由だけをもたらしたわけではありませんでした。

それまで導いてくれた確かな存在がミュートされ、私たちは広い世界に、自分の足で立つことになったのです。

直接的な声が聞こえなくなった空白を埋めるように、世界の各地で神託や占い、厳かな儀式が広がっていきます。

直接対話できなくなった天からの答えを、なんとかして受け取ろうとする必死の試みだったのでしょうか。

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迷いと共に生きること。
それは、操られる存在であることをやめ、自ら選び、歩き始めた私たちの定めなのでしょう。

そしてもし、あなたが自分の奥から不思議な声が立ち上がるのを感じたことがあるなら――

それは、消えてしまったはずの声なのでしょうか?

現代心理学では、「神が語った」とは扱いません。
脳内の音声処理や自己認識の働きとして説明します。

時に内的な言葉が、自分のものと感じられないことがあります。
それは認知の現象として理解されています。

それでも不思議に思いませんか?
私たちはなぜ、いまも導きを求めるのでしょう。

神さまはオフラインになったのか、それとも、形を変えて内側に息づいているのか……

次回は、その“声”のゆくえを、催眠と心理学の視点から探っていきます。

Shiva(しば)

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▼「失われた神の声」シリーズ投稿一覧

  • 第1回:神さまはオフライン? ― 「神の声が消えた日」をめぐる旅
  • 第2回:催眠と「神の声」 ――内なる声と二分心の名残をめぐって
  • 第3回:二分心の崩壊―「神の声」から「無意識」へ―
  • 第4回:占いは心の鏡 ― 失われた声を映す、対話の仕組み
  • 第5回神の声とAI―失われた神の声をめぐる旅・最終章―

次回は、 催眠と「神の声」 ――内なる声と二分心の名残をめぐってをお届けします。

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