無意識を信頼する(ペギーの自動書記)

催眠療法

先日、催眠初級講座の第二回を実施しました。

第二回講座はミルトン・エリクソンが講座の中心テーマでした。

そこで、エリクソンの「無意識を信頼する」話をしましたが、みなさん興味深く聞いてくださったようです。また、対面講座の時に「自動書記」の体験をしたいとリクエストがありましたので、実施しようと思います。

エリクソンの逸話のなかでもよく知られている「ペギーの自動書記」の話を「無意識を信頼する」一例としてあげました。こういう話です。

ミシガン州立大学で催眠の講義があったときに、エリクソンが「自動書記」の実演をすることになった。
被験者になったのはペギーという女性。4月のことだった。

エリクソンは、ペギーをトランス状態に入れ、<覚醒後に、無意識のうちに文字を書きます>という暗示を入れるはずだったが、ペギーは暗示を聞く前にトランス状態で何かメモに書きつけて、それを折りたたんで自分のバッグに入れてしまった。
そこで、エリクソンはもう一度ペギーをトランス状態にしてから、「覚醒してから、あなたは<6月の美しい日です>と書くでしょう」と暗示した。

覚醒したペギーは、暗示通りに無意識で<6月の美しい日です>と書いた。
その紙をエリクソンがペギーに見せたところ、「私は何も書いていないし、その筆跡はわたしのものではない」と言った。

そして9月。ペギーからエリクソンに電話がかかってきた。
「今日ハンドバッグの中を整理していたら、丸まった紙が出てきました。これは先生が関係しているのではないかと思って電話しました」

ハンドバッグの中に入っていた紙には「私はハロルドと結婚するのかしら」と書かれていた。

ペギーは4月の自動書記の被験者になった時点でビルと婚約中だった。
その時、ペギーはビルに対して何の疑念も持っていない状態だったが、6月になりビルと別れることになってしまっていた。

そして、7月。ペギーは偶然顔だけ知っていたハロルドと出会い、すぐに結婚。
9月になって4月に書いた「私はハロルドと結婚するのかしら」という紙を発見する。

この出来事に対して、エリクソンはこのメモはペギーがトランス状態で書いたものであると説明し、ペギーの無意識は、その時好きだったビルとは別れること、本当に好きなのはハロルドであると知っていたのだ、と答えた。

この話は、さまざまな観点から興味深いのですが、長くなるのでまた別の機会に。
ひとつだけお伝えしたいのは、<私>の無意識は<私>の味方である、ということです。
だからこそ、エリクソンは「無意識を信頼」していました。

自動書記を行った時、無意識は「私はハロルドと結婚するのかしら」と書いたメモをバッグにしまい込みます。これは、4月にペギーには知らせるべきでない内容だったからではないでしょうか。
なにしろ、その時のペギーはビルと婚約中で仲良く過ごしていたのですから。

無意識はその情報が<必要な時>があることを知っていて、適切な時に受け取れるようなことまでしてくれるのですよね。

これは催眠療法を受けられたクライエントさまにとっても同じです。
無意識、潜在意識、守護霊、私たちには計り知れない領域からのメッセージは必要な時に必要に応じてその方に伝えられるものなのです。